記者会見
平野弁護士 :
弁護人の平野です。Coinhive事件について先ほど無罪判決が言い渡されましたので、その理由と、この事件が社会に与えるインパクトについてお話したいと思います。
本件の争点は大きく分けて3つありました。
判決内でも述べられていましたけれども、そもそもCoinhiveというものがウイルス、不正指令電磁的記録に当たるか。
2番目として、実行の用に供する目的、これがあると言えるか。
そして3番目、故意があると言えるか、です。
1番目の、ウイルスに当たるかどうか、という点は更に2つに分かれます。
閲覧者の意図に反してプログラムを実行する、反意図性が認められるか。
そして2番目、不正な指令と言えるか、です。
この裁判ではいずれの論点についても弁護側が争い、検察側はこれがいずれも成立する、と主張していました。
判決においては、まず反意図性、これについてはCoinhiveは、反意図性を有するという風に判示していました。
これは、事件当時、一般的なユーザーにCoinhiveが認知されていたとは必ずしも言えない、そしてユーザー視点からすると、プログラムが実行されていることに気付かない、という点が挙げられていました。
よって、ユーザーとしてはCoinhiveの実行に承諾を与えたとは言えない、という訳です。
他方 不正性、こちらについては否定しました。
まず不正な指令というのは条文を解釈して、次のように整理していました。
ユーザーに与える有益性、そのプログラムを実行する必要性、ここでプログラムが実行される事によってユーザーに与える有害性、またそのプログラムに対して、技術者・エンジニア達が有している意見・評判そういったものを考慮すべきだと述べていました。
Coinhiveについて言いますと、まずウェブサイトの運営にはお金が掛かるものであり、そのマネタイズ手段としていろんなものがこれまで開発されている。広告であったり、会員制であったり、そういった一般論をまず述べた上で、Coinhiveの、実行によりウェブサイトの運営者が利益を得られる、これによって安定的な収益につながりウェブサイトの維持管理が容易になる。また有害性という点で考えても、Coinhiveは必ずしも閲覧者に与える負荷が高いわけではなく、またブラウザを閉じれば実行を終了してしまうものであると、こういった点を考えたときに、必ずしも不正なプログラムとは言えない、
という風に述べていました。
よって、裁判の争点としては、そもそもCoinhiveは不正指令電磁的記録、いわゆるウイルスに当たるものではない、という点で、犯罪の成立自体が否定されました。
なお、予備的にと言いますか、仮にCoinhiveがウイルスに当たるものだったとしても、今回の被告人には、故意も実行の用に供する目的も認められない、という風に含言していました。
判決内で、印象深かった言い回しとして、今回Coinhiveという新しい技術が出てきたときに、警察は警告もなく、事前に十分に調査することもなく、いきなり取り調べを行い刑事罰を適用する。こういったものは行き過ぎである と強く警察を批判していました。この点は、重々記録しておくべき事だと思います。
さて、この判決が社会に与える影響についてです。
昨年から不正指令電磁的記録に関する罪、についての摘発が相次いでいます。
このCoinhiveもそうですし、Wizard Bible事件といいまして、簡単なプログラムを紹介していただけのサイトが閉鎖を迫られたり、またつい先日でありますがブラウザクラッシャー、無限アラート、閲覧者がいくら閉じるというボタンを押してもアラートが出続けるという簡単な悪戯なんですけれども、これについても兵庫県警察が摘発を進め、主に未成年者が数名、刑事手続きの対象になっているという事例があります。
そもそも不正指令電磁的記録に関する罪というのは、要件が非常に曖昧です。
そのために、慎重な適用が求められるところ、各地方警察においては、そういった慎重な検討を経ることなく、乱暴に摘発を進めてしまい、現在セキュリティエンジニア・IT業界全体を含め、大きな懸念が寄せられています。
このCoinhive事件において、不正指令電磁的記録に関する罪 の要件が改めて具体的に示されたことによって、こうした警察の暴走が今後食い止められることを願っております。
質疑応答
記者A :
男性、お名前は出さない方が良いですよね?
男性の方に伺いたいですけれども、無罪判決を受けての感想をお願いします。
モロさん :
そうですね、一先ず一安心という気持ちです。
ただ、私自身今回の事で無罪として頂いたのですけど、そもそも警察に家宅捜索をされてしまって、取り調べを受ける、というその裁判にまで至るフロー自体がそのすごく問題だと思うので、今回の件だけではなく今後のそういった事態にも目を向けていったらなと思ってます。
記者B :
お名前出してはいけないとの事で男性という風に伺いますけれど、こういった自体に目を向けられていったらとおっしゃっていたんですけど、ちょっと具体的に教えて頂けますか。
モロさん :
はい、具体的に、というと、現時点では何が出来るかすごく難しい物だと思うのですけど、やっぱりインターネットの仕事をしている人間なので、例えば情報を発信していくだとか、何かしらの形で例えば無限アラート事件といわれてますけれど、そういうものに遭ってしまった方たちに対しても何かしらの形で意見できたらなと思います。
記者B :
ご自身の経験を、同じような警察の捜査を受けた人と連絡を取り合う様なことや助け合うという事をしていきたいという事ですか。
モロさん :
そうですね。先ほども申し上げた通り具体的なところということはないんですけれど、例えば今回裁判をして無罪になったという事だけでも何かしらの意味はあるのかなと思っているので、また引き続きこれからも自分に出来る事が何か無いかなというのは探していきたいと思います。
記者C :
判決の中で、インターネットの技術革新についても若干触れていたかなと思うんですけれども、今回の判決がIT業界に与える影響についてはどの様に考えていらっしゃいますでしょうか。
平野弁護士 :
まず、ポジティブな部分とネガティブな部分と両方あると思います。
今回の判決では、残念ながら反意図性の部分については認められませんでした。こちらの主張が通らず、反意図性はあるという風に認定されてしまいました。
その理由として、一般的なユーザーに認知されていない という事が挙げられていました。インターネットはドッグイヤーと言いまして、人間の1年がが犬にとっての5年に相当するという風な世界です。あっという間に技術が進歩していきます。次々と新しい技術が生まれていきます。当然ながらそういった新しい技術というのは、一般的なユーザーに認知されていません。また、ユーザーの気付かない所で動くものが多いです。そうだとすると、Coinhiveについて反意図性が成立してしまうのであれば、他の多くの新技術についても反意図性が認められてしまう、という点に懸念があります。
今回は運良く、不正性の部分で勝てましたが、今後出てくる新しい技術が果たして不正性の部分で勝てるのか、という点について、今後IT業界で、懸念が進むのではないかと思っております。
今述べてきたのはネガティブな方のインパクトですけれども、他方ポジティブな方のインパクトとして、不正性の部分について具体的な指針が出てきました。有益性、必要性、有害性、学識経験者達の意見、そういったものです。
それによって、今後新技術を開発する上で、どの様な点に考慮していけば不正性の要件を克服できるのか、という点がクリアになってきたと言えるのではないでしょうか。
(有益性~の部分について記者から聞き返し)
有益性~等について指針が建てられましたので、今後新しい技術を開発していく上で、こうした点を考慮すれば良いと、という点で、クリアになってきたのではないかと思います。
記者D :
Coinhiveで、検挙されている人が21人いると思うんですけれど、その人たちへの影響ってどういう風な事が考えられるんでしょうか。
平野弁護士 :
今回、Coinhive自体が不正指令電磁的記録に当たらないという風に判示されましたので、残りの検挙されている人たちのうち、まだ捜査中となっている人たちについては、不起訴処分になるのではないかと考えられます。
ただ、その中では、もう略式を受け入れて、有罪判決となってしまっている人もいると思います。
そうした人への救済をどの様にしていくかは今後の課題だと思います。
記者E :
男性の方にお伺いしたいのですけれども、先ほど無罪を受けるまでにも大変だったことがたくさんあったという様な話があったと思いますが、取り調べであるとか、いろいろな物が持っていかれてしまうであるとか、そういったことの中で何が一番大変だったかという事と、いろいろな応援の声もあったと思いますが、一番支えられたものについてお伺い出来ればと思います。
モロさん :
大変だったことについては、やはり一番は取り調べだったかなと思います。あと今日もそうなんですけど、横浜まで来るのが結構大変で、6時起きとかなので結構大変でした。
その中で支えとなったのはやはり妻の存在が大きかったと思います。すごく感謝しています。
記者F :
2点、
1つ警察庁の方で、マイニングツールについて犯罪にあたる可能性があると公告というか、ホームページに出ているのですけど、摘発した後になって、こういう犯罪に当たるとするこの手法についてどう思われるか、
2点目、各地でウイルス保管罪の摘発が相次いでいるということで、チートツールみたいなものでも摘発してしまうという事、どうしてそういった事が起きてしまうのか、法律的な不備なのか、もしくは捜査対策の問題なのか、そこの考え方とかもありましたら伺えますでしょうか。
平野弁護士 :
まず、1番目のご質問についてです。
警察が後付けで警告文を出した、この点についてですけれども、決して許されない事だと考えています。
そもそも刑法は、なぜ罪刑法定主義といって、予め法律で罪を定めているのか、それは、事前に人々にこういう事をやってはいけないよ ということを示す為に条文として定められている訳です。刑法の事前警告機能といいます。
そもそも、これがウイルスかどうか分からない状態でやった人に対して、摘発し、後付けで実はこれはウイルスに当たる可能性があるからやってはいけないんだよと公告する、これは明らかに刑法の事前警告機能を害するものであって、憲法上の重大な問題を含んでいると考えています。
2番目、摘発が相次いでいる理由についてなんですけれども、それについては、法律上の問題、現場の運用上の問題、両方とも挙げられると思います。
まず、法律上の問題についてなんですが、先ほども申し上げた通り、この不正指令電磁的記録に関する罪というのは、大変曖昧な条文になっています。なぜ曖昧になっているかというと、情報通信技術は発達がものすごく速い、だから、曖昧な条文にしておいて、何でも摘発できるようにしておく、という風な、そもそも狙って曖昧にしている部分があります。
逆に、警察の現場としては、こういった曖昧な条文があればそれで何でも摘発出来てしまう訳ですから、点数稼ぎにはうってつけの罪という事になってしまいます。
現場の中での問題ということなんですけど、そもそも地方警察においてはサイバー犯罪に対処する能力が無い、あるいは極めて低い、という構造的な問題があります。
今回、被告人の男性が、摘発されて取り調べを受けたのは神奈川県警の港南署なんですけれども、港南署で取り調べを行っていたのは生活安全課の隊員です。
同様に各地方警察においても、サイバー犯罪というのは生活安全課で取り扱っています。今まで少年犯罪とか、ご近所の犬がうるさいとか、そういった問題について管轄している人たちが、いきなり今日からお前はサイバー犯罪をやれと言われて、よく分からないプログラムを見せられて、摘発をする。これは警察官にとってもかなり気の毒な状況です。
私が思うに、サイバー犯罪については地方警察の管轄として扱うのではなく、国家全体として、統一的に取り扱う部署が必要なのではないかと、さもなくば現状の様に能力の低い警察官が、ノルマを課せられ、点数稼ぎの為に簡単な犯罪 と見える物、例えばブラウザクラッシャーであったり、そういったものばかり摘発して点数を稼ぎ、本当に対処が必要な重大なサイバー犯罪については手も足も出ない、そういったことが続くのではないかと思います。
以上です。
記者G :
男性に伺いたいのですけれども、一先ず安心しました という事でしたが、当初から今回の件において無罪であるという確信が持てましたでしょうか。
モロさん :
無罪の確信、そうですね、法律の事については専門家では無いので、例えば警察の方だったり、検察官の方だったりにお前がやったことは犯罪だという風に詰めよられてしまうと、もしかしたらそうなのかなっていう不安はありました。
記者H :
警察の方でですね、まだCoinhiveの方が犯罪性のあるという様な表記がされているかと思うのですが、今回不正性の部分に関しては否定されたと、ある意味矛盾している状況が生まれていると思うんですが、どうするべきだと思いますか
平野弁護士 :
警察の公表と、今回の判決が矛盾しているという話ですね?
記者H :
そうですね、
今回不正性が否定されたと思うんですけれども、その点に関してある意味警察は不正であるというか、違法であるという様な、それがあると摘発対象になるような告知がされている様な状況だと思うのですけれども、今後どうしていくべきだと思いますか。
平野弁護士 :
警察の言い方は慎重で、犯罪になる可能性がある という話なんですね。
今回無罪判決が出ましたけど、もしかしたら控訴されるかもしれない、控訴審で覆るかも知れない、別の人が裁判をやったら、別の判決が出るかもしれない。そういう意味では、常に違法となる可能性っていうのは常にある訳です。これは別にCoinhiveに限らず、すべての犯罪についてそうだと思うんですけど、なので警察が明らかに嘘を言っているという訳ではない。
ただ、ただですよ、今回この様に無罪判決が出てしまった以上、警察としては直ちにその警告文については取り下げるべきではないかと思います。と言いますのも、警察がそういった警告文を出すことによってやはり国民は萎縮して、自由が不当に侵害されている という状況になるからです。
お答えになっておりますでしょうか。
記者H :
例えば警告文を出す部分で、十分な検討がなされないまま掲示されたという様な見方が出来るかと思うのですが、そのあたりについていかがですか。
平野弁護士 :
警察内部での検討状況については、申し訳ありません、私はちょっと分からないので何ともコメントできないんですけれども、ただ、警察内での公開されている議事録などを見る限り、十分な検討はなされていないように見受けられます。
記者H :
分かりました。ありがとうございます。
記者I :
平野先生に伺いたいのですけれど、今回みたいな罰金刑の様な微罪っていうのが、書類送検されて、今回の男性の様に、申し立てなかった場合もうそのままという様な状況があると思うんですけど、こういう微罪の争われることが少ない所についての問題点みたいのを伺いたいです。
平野弁護士 :
略式で罰金を受け入れてしまった場合、それについて十分な審議がなされません。Coinhiveにおいても略式で罰金刑を受け入れてしまっている人が何人かおられます。しかし、警察は略式で罰金が出たんだからもうこれは有罪だと、裁判所のお墨付きが出たのだと判断します。つまり、軽微な罪について略式で罰金刑が出てしまう、これによって警察がますます勢いづく という悪循環が発生します。
被疑者の側としても、略式を受け入れることはメリットがある訳です。今回、被告人の方は戦う覚悟を持って1年近く戦ってこられましたけど、時間も費用も掛かることだし、ということで略式刑の罰金刑を選択する方も数多くおられます。
この様な状況下で何が起こるのかというと、みんなが諦めてしまう、お金を払って済むのならさっさとそうしたい、という事で略式刑を受け入れてしまう。
その略式刑によって前例が出来たことによって警察がますます勢いづいて摘発の範囲を広げてゆく、これによって国民の自由がますます侵害されていく という悪循環が発生してしまう訳です。
これを止めるためにはどこかの段階で争わなければならないんですけど、その争うという行為自体が難しいという問題があります。
実際に逮捕されれば、国選弁護人をつけたり、正式裁判で起訴されればやはり国選弁護人をつけたりということもできるのですけど、在宅で取り調べられている限り、弁護人を付ける余裕のない人というのはなかなか難しいですよね。
記者I :
今のに関連して、男性の方に伺いたいんですけど、最初に正式裁判を申し立てることに迷いもあった、負担もあったというような話だったかと思うんですけど、それで今回裁判になって、こういう風に無罪判決が出たわけですけど、今回のその刑についてと、
あと傍聴に沢山関係のエンジニアの方だと思われるんですけどいらっしゃってて、応援されていた・支援されていた方へのコメントもあわせてお願いします。
モロさん :
(質問の一部聞き返し)
記者I :
最初裁判をすることに対して迷いがあったという風にお話されていたと思うのですけど、今回その裁判をすることにして、そういう決断をなされて、今無罪判決が出ている訳ですけど、それについてご自身の当時した決断についてどう思うかとみたいな所を伺えたらと思います。
モロさん :
無罪判決を頂けたことについては先ほども申し上げた通り一安心という気持ちです。
これまで裁判という物自体にあまり縁がない生活を送ってきたので、今となってはよく裁判をしようと思ったなという気持ちが強いですね。ただ結果としてこういう形で出せたので、すごく自分にしては良い判断だったのかなと思っています。
応援してくれた方、支援してくれた方についてなんですけど、やっぱりその取り調べであったり家宅捜索であったりというのがすごくあって、普通であればそれでもう仕事ができなくなってしまったりだとか、収入が安定しなくなったりとか、そういった可能性も全然あったと思うんですけど、いろんな方に支えて頂いて、職を続けてこられたのというのと、今回の裁判についてもすごく色々な方に頑張れとか、応援の言葉をかけて頂けたのですごく心強かったですし、感謝しています。
ねとらぼ kikka記者 :
男性の方にお伺いしたいのですけど、取り調べのときの音声データを頂きまして、お前のやっている事は法律に引っかかってるんだよと言われてましたけど、この捜査を行った捜査員にどんな事言いたいですか?
モロさん :
はい、どんなことを言いたいか…引っかかって無かったですね って気持ちですかね。
当時、取り調べというものにも全く縁が無くてどういったものか分かっていなかったですし、弁護士を呼んでも良いという事も知らなかったので、警察の人が引っかかってる っていうんだから引っかかってるのか という気持ちになってしまう部分もあったので、私の様な法律の素人というか、取り調べの素人というか、そういった人に対してもフェアな取り調べを今後して頂けたら良いなと思います。
以上です。
ねとらぼ kikka記者 :
ありがとうございます。
もう一点あるのですが、これは平野先生にお伺いした方が良いかもしれないんですけれども、無罪判決が出た事で国賠の予定といったものは検討されていますでしょうか。
モロさん :
特にないですかね…?
平野弁護士 :
うーん、国家賠償については検討中かなぁ~? という所ですね。まだ確たるものは無いです。
ねとらぼ kikka記者 :
分かりました。ありがとうございました。
記者J :
先ほど警察の捜査の方が出ていたと思うんですけど、
今回の地検の方の立証についてもし何かご感想があれば伺いたいと思います。
(加えてモロさんに、何市と書いても良いのか、何市と書けばいいのかの質問)
モロさん :
(上記の回答)
平野弁護士 :
地検の立証方法についての感想ですね、
あんまり言うと検察を激怒させて控訴を煽ってしまうので言いたくないですけれども、まず今回捜査に当たった警察官も技術に対する理解が不十分でしたが、公判について担当した検察官、こちらも技術についての理解が大変不十分な方でした。
インターネットの広告の仕組みなどについて、私がいちいち公判前整理手続の後で、こういう本を読むと良いよとか、図を書いて教えたりとか、ですね、そういった事をしながら内容を理解してもらって、君はこういう罪について起訴してるんだよというのをいちいち弁護人からレクしなければいけないという本末転倒な事態になっておりました。
警察のみならず検察についても、技術的な知見を蓄積していく事が必要なのではないかと思っています。
そして、公判にもってきた立証活動、これも大変お粗末なものであったと考えています。
私が言及したのはGoogle翻訳でしたけれども、これも人の有罪無罪を決める、前科をつけるかどうかを決めるという場において、Google翻訳の証拠を出してくるというのはとても信じがたいことですし、他にも、Coinhiveを警察の方で実験した記録が証拠として出てきましたけれども、公判で少し述べました通り、その実験自体が不正な物でした。こういったものについて、もし今回被告人が争わずに略式裁判を受け入れてしまったならば、こうした変な証拠を元に人の有罪が決まっていたという大変恐ろしい自体だと思います。
記者K :
男性にまず伺いたいんですが、その警察の捜査が、フェアに行って欲しいというご感想がありましたけれども、もう少し詳しく伺いたいんですが、改めてどういった点がフェアじゃなかったなと特に思いますか。
モロさん :
そもそも予告なしに家宅捜索をされて、東京都に住んでいるのに神奈川県に呼び出されて、何が法律に引っかかっているのかというその具体的な説明というのも特にないまま、反省しているのかの一点張りで、何が何でも反省してると言わせようとする、みたいなやり方自体が、そうですね。
そもそも警察に憧れというか、正義の味方なんだ、かっこいいなというすごくピュアな気持ちでいたので、そういった部分がやはり残念だったと思います。
記者K :
反省を促された以外に、どういう所が気になったかもう一回教えて頂けますか。
どんな事を言われたという部分をもう一回、すみません。
モロさん :
やっぱり技術的な知識があまりなかったのが印象的で、先ほど平野先生が検察官に対してレクチャーをしたという風におっしゃっていましたけど、私も結構取り調べの中でパソコン教室の様な事をしなければならない時間があったりだとか、そういった部分もあって。
あとは、今までの取材なんかでもお答えしているかなと思うのですけど、お前の両親がCoinhive使われたらどう思うんだ!、という風な話についても、技術的な部分での知識が無い事に起因しているのかなという風に感じるので、そういった部分も今後改善されたら良いですね。
記者K :
やはりその、強引というか、罪を前提しているという様な言い方というのは何か感じられましたか?
モロさん :
罪を前提にした言い方 という意味で言えば、一環してそうだったかなと思います。
記者K :
例えば?
モロさん :
例えば、そうですね、反省してんのか もそうですし、具体的にぱっと出てこないんですけれど、ほぼ常に一言一言に含まれたニュアンス含め、全体的にそういった雰囲気だったかと思います。
記者K :
平野先生に伺いたいのですが、略式命令で多くの被疑者?被告?、が命令に従って罰金を支払って終わってしまっていますけれど、今回の男性の様に無罪になるケースもある訳ですが、略式命令で多くの終結してしまっている今回の件についてはどう思われますか。
平野弁護士 :
大変残念なことだとは思います。しかし、ここは本当に難しい所で、皆さんに、皆さんじゃあ無罪になるから私と一緒に戦いましょう、1年間裁判で頑張りましょう、と弁護人の立場からはなかなか提案しづらい所がありまして、男性の方は頑張ってくれました。
けれども全ての人にそれをお勧めできるわけでは無い、これは日本の刑事裁判全体の問題だとは思うのですけど、裁判で争うことは大変な苦痛と費用と時間等を伴うものである、これはどうにかしなければいけないと思います。
記者K :
一方で、検察側としては略式の方がうまく、簡単に進む様に見えますが、そちらから見るとどうですか。
平野弁護士
検察から見ると、略式が?
記者K :
検察から見ると、略式で済めば裁判をやらなくても、正式裁判をやらなくても済む訳ですよね。命令に従ってくれれば、それで終わる訳ですけれども、それで微妙なといっても良いのかわかりませんけれども、正式裁判にならないまま、カタがついてしまうことについてはどう思われますか。
平野弁護士 :
略式の裁判においては、実質的な審理がほとんどなされません。簡易裁判所で、書類だけ見て、一日で結審する手続きです。
ですので、略式裁判で有罪になっているものの中には、もちろん明らかに黒というものも含まれているとは思うのですが、しかし、これはグレーなんじゃないか、むしろ白寄りなんじゃないかというものは、たくさん含まれているはずです。
Coinhiveについてもそうですし、他の犯罪についてもそういったものが多数含まれているはずです。
これまでのところ、そういった略式で有罪になってしまったけれども本当は怪しいんじゃないか、というものが多数存在してきました。検察から見ると、有利な、便利な制度なのかもしれませんけれども、人権の救済という点では、かなり問題のある制度なのではないかと思います。
記者K :
男性にもう一点だけ、既に伺っていたら恐縮なんですけれども、広告収入の代替手段としてマイニングの可能性を試されたと思うのですけど、結果的に利用が始まって間もないプログラムを試すということについては、今日の判決では、一部認められた部分があると思いますが、これによってあなたが裁判した、裁判で時間とお金と非常に使ってきたという所がどう認められたなという実感をもう一度お願いします。
モロさん :
そうですね。
判決自体は無罪という形で出して頂いて、ありがたい事なんですけれども、こちらの主張が100%認められたわけでは無いと思うので、そういった部分ではある種納得できない部分も勿論あるんですが、ただ、私以外にも全国に20人の方がCoinhiveで摘発されていて、そうした方たちが、全員がそうなのかは分からないんですけれど、Coinhiveというサービスを試して、新しいマネタイズの手法を試していこうという、姿勢自体罰せられるものではなかったんだ という事だけ伝えたいと思います。
以上
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